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ダリボルとは?
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ダリボルのあらすじ

序幕以前のできごと
時は十五世紀、ヴラヂスラフ・ヤゲウォが国王として治めていた頃のボヘミア。その当時、小さな領地を持つ下級貴族で騎士のダリボルは、その万人への公平さと生まれ持つカリスマ性で農民など貧しい人々の支持を集め、それに不満を持つ周囲貴族たちに敵対されて、あちらこちらで叛乱を起こしていた。激昂しやすい性格の彼は、宿敵リトムニェジツェとの戦いで無二の親友・ズデニェックを殺されると、その復讐を誓い、まず、リトムニェジツェを援助していたというプロシコヴィツェの城主を血祭りにあげた。しかし、その城主の妹・ミラダが、さらに兄を殺された復讐として、国王ヴラヂスラフにダリボル征伐を依頼したため、ダリボルは国王の軍に捕らえられ、プラハへ拘束されて、今は裁判を待つ身である。一方、ダリボルにひろわれて育った孤児の少女イィトゥカは、領主を救おうと恋人のヴィーテックとともにプラハへ向かったのだった。

第一幕
プラハ城内の一角で、ダリボルの裁判がはじまろうとしている。イィトゥカは、ダリボルに救われたときのことを思い、彼の救出の誓いを高らかに歌う。そこへ、国王ヴラヂスラフが入場し、原告であるミラダを呼ぶ。喪服で登場した彼女は、ダリボルの城の急襲、兄の臨終のありさまを詳しく語り、民衆の同情と、兄を奪った野蛮な男への制裁を乞う。そこで、被告のダリボルが入場するのだが、その立派な容貌と態度を見たミラダは驚きを隠せない。犯行の動機を問われたダリボルは、包み隠さずにかけがえのない親友を奪われた時の状況を話し、その悲しみと怒りを訴えて、再び自由の身になっても、復讐の続ける、邪魔をするならば国王すらも敵だと放言するので、終身刑を言い渡されてしまう。しかしダリボルは、親友のあとを追っていける喜びを歌い、従卒につれられて牢へと向かう。ところが、この間に完全にダリボルに恋してしまったミラダは、裁判前とは打って変わった態度で、国王と裁判官たちに彼への慈悲を乞いはじめる。ヴラヂスラフはそれを押しとどめ、平安を保つためには、感情ではなく秩序と法を厳守するしかないと説き、裁判官たちや民衆と退場する。ミラダは、兄の仇と思っていた相手への思いが急激に変わってしまった自分の感情についていけず、ずっと自分を見守っているイィトゥカの存在にも気付かないで、胸の内の混乱と、自分のせいで愛する人を永久に失ってしまった苦しさを口にする。そこでイィトゥカはミラダに声をかけ、ダリボルを救うための自分の計画に加わってくれるようにと勧め、意気投合したふたりは早速ことをすすめるためにそろって退場する。

第二幕
プラハ城下町の一角。居酒屋から、愉快な男たちの歌声が聞こえてくる。それは、イィトゥカの恋人、ヴィーテックが、ダリボル救出のために集めてきた従卒たちである。そこへやってきたイィトゥカと居酒屋から出てきたヴィーテックは、まず愛の二重唱を歌うと、ことの成り行きを報告しあう。この計画の首謀者であるイィトゥカは、ミラダが男装し、乞食の琴弾きになりすまして、城内へ侵入しダリボルとの接触をはかろうとしていること、合図が入ったら、ヴィーテックの集めた従卒軍と脱獄を助けにいくことなどを話す。そこへ、居酒屋から従卒たちが出てきて、イィトゥカのリードで全員の気持ちの統一を歌う。場面は変わって、城内の看守の住居。近衛隊長のブヂヴォイが、看守のベネシにダリボルの監視を怠らぬよう釘を刺していく。ベネシは、味気なく陰鬱な仕事に愚痴をこぼす。そこへ、少年の姿をしたミラダが夕食の用意ができたことを告げにくるが、年老いて立ったり座ったりが不自由なベネシは、まだ仕事があるからと席につこうとしない。そこで、ミラダが代わりに仕事を片付けようと申し出ると、ベネシは、ダリボルからヴァイオリンをほしいと頼まれているので持って行ってやるようにと言う。ミラダは胸の内に喜びと緊張を感じながら、ダリボルの牢へと向かう。一方、それと同じ頃、牢の中のダリボルは、ズデニェックの降臨する夢を見て、今は亡き親友を懐かしんでいた。そこへ、ヴァイオリンを持ったミラダがやってきて、自分の正体と気持ちを明かしながら、窓の鉄格子を切るための道具を渡し、許しを乞う。その一途な気持ちに心を打たれたダリボルは、彼女がズデニェックにたちかわる存在であると信じて、生まれてはじめて女性への愛を感じる。気持ちをひとつにしたふたりは、永久に変わらない愛を誓い合うのだった。

第三幕
それから数日後の夜、近衛隊長ブヂヴォイより、ダリボルについての緊急の連絡を受けた国王ヴラヂスラフは、裁判官たちを招集して、看守ベネシの報告を聞く。それによれば、彼が不憫に思ってひきとっていた琴弾きの少年が、ダリボルと接触を持ったのちのその日の夜、ベネシの口封じのための置手紙と金袋だけ残して消えてしまった。それで、すぐ近衛隊長にそのことを知らせたのだという。これを受けて、裁判官たちはその夜のうちにダリボルを処刑してしまうことを国王に提案する。はじめのうちは躊躇していたヴラヂスラフも、彼らの意気に押されて、処刑の執行をブヂヴォイに命じる。その頃、何も知らないダリボルは、丁度最後の鉄格子を切り取り、自由の身になれる喜びと、中断された復讐を成し遂げる誓いを口にする。そうして、まさに脱獄しようとしたその時、従卒たちをつれたブヂヴォイに発見されてしまい、しかも、死刑の判決が下ったことを知らされる。一時は動揺したダリボルだが、しかしこれも己の運命と覚悟を決めて、ブヂヴォイたちにつれられていく。一方で、城から脱出してきたミラダとイィトゥカ、ヴィーテックのひきいる従卒たちは、牢のある塔の近くで、ダリボルからの脱獄の合図を待っていたのだが、城内から、死刑を受ける罪人を処刑台へつれていく修道士たちの歌が聞こえてくるので、脱獄の失敗を知る。激怒したミラダは自ら先頭に立って、ヴィーテックや従卒たちとダリボル救出のために城内へなだれこむ。それから間もなくすると、ダリボルが瀕死の傷を負ったミラダを腕に抱えて城から脱出してくるが、イィトゥカやダリボルの見守る中、ミラダは息絶えてしまう。そこへ反乱軍の完敗を伝えにきたブヂヴォイにダリボルは決闘を挑み、自ら剣を受けて地にくずおれる。

スメタナの第三作目のオペラ。1866年頃完成、初演は1868年。現在の国民劇場Národní divadloの基礎工事の祝典セレモニーのオペラとして初演された。基礎工事記念というのは、チェコという国が自らの民族のアイデンティティー・誇りを象徴するチェコ国民の劇場を建設するため、チェコ中の様々な場所の石を切り出し、国民劇場の土台として使う、その工事の始まりを祝う、という意味があり、そういう意味でもダリボルは重要なオペラであった。そして、スメタナはこの記念すべきオペラを、これからの音楽の方向性を示すべく、民衆にとって単純でわかりやすい音楽を意図的に作曲するのではなく、自身の芸術性を注ぎ込み、チェコ音楽会がこの先さらに発展していくべき道を示した。プラハ初演は民衆から歓迎されたにも拘らず、非常に斬新、先進的なこの作品を保守的な批評家たちから妬みも絡み批判され、「ダリボル《は上幸な道を歩み始める。スメタナの苦悩が始まった。彼の生前、チェコで上演されたのはたった15回ほどで、「ダリボル《の評価が高まり、その作品の凄さが理解され始めたのはスメタナの死後であった。
プラハのカレル大学哲学部で音楽者且つ作曲家であったアンブロス教授が講義中にこう語った。「先日、ダリボルの初演があった。・・・あらゆる音符は真珠であった。・・・しかしあのスメタナという作曲家は、「 生簀 いけす の中の鯨だ《後にウィーンで「ダリボル《を指揮したグスタフ・マーラーはこの偉大な作品を愛したひとりであったが、この言葉におおいに同意し「生簀の中の鯨《を称えた。アンブロスは元来スメタナを評価しない人間であった。しかしその作品を知るにつれ次第に理解を深めていく。「生簀の中の鯨《という言葉は、スメタナがチェコの中に おさま りきらない世界のスメタナ、いやもっと大きな存在であることを示している。

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